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COFFEE BREAK
世界のコーヒー-World-
2018.12.17
食の都リマと歴史の街クスコ、それぞれのコーヒー物語。
食の都リマと歴史の街クスコ、それぞれのコーヒー物語。
世界遺産に指定される古代インカ文明の遺跡で有名なペルー。
観光面での露出が多いが、実は近年美食の世界で注目される国でもある。コーヒーの産地としても知られ、南アメリカでは、第三の生産国だ。首都リマと古都クスコの二都市で、気になるカフェを紹介する。
Puku Puku Café プクプクカフェ
ペルーの首都リマは、南米の「食の都」として称えられる。中でも街並みの整ったサン・イシドロとミラフローレスは、高級感のあるレストランやバーが集中する華やかなエリアだ。 両地区で3店舗を営む「プクプクカフェ」は、ペルー産の上質なコーヒー豆を使ったカフェとして親しまれ、今年8月で創立から5年を迎えた。暁の鳥のように、新たな文化の到来を告げる。
サン・イシドロのオフィス街に位置するパルド・イ・アリアガ店には、コーヒーを飲みながらミーティング、おしゃべり、勉強、デートなど、客がそれぞれの目的で店舗を利用する、居心地のよいカフェらしい光景がある。 「当店では、プノ、クスコ、カハマルカ、パスコという異なる名産地の小規模農家から直接購入する豆でコーヒーをいれています。農地に出かけて生産者との信頼関係を続けるのも、私の仕事の一つです」と創業者で共同経営者の一人であるハイメ・ゴルディージョさんが店舗を案内してくれた。 こうした専門的なカフェが営めるのは、世界の流行に乗って最近十数年で、コーヒーの消費量が増し、味にこだわる人も増えてきたお陰だという。リマでコーヒーといえば、以前は食後の口直しに嗜む程度の飲み物だったそうだが、今ではようやく、豆の質にこだわるカフェが街で15店ほど営業するようになったとのことだ。 「コーヒーだけでなく、メニューのケーキ類や販売用のオリジナルグッズも小規模生産者が作る品です。またこの店舗の内装のあちこちには再利用の建材を使っています。上質なコーヒーをお出しするだけでなく、フェアトレードやリサイクル、持続可能性といった今後ますます必要とされる文化を、コーヒーを通じて発信していきたいのです」とゴルディージョさん。 プクプクとは暁に鳴くアンデスの野鳥の名称だ。カフェはこの鳥のように新しいコーヒー文化の到来を告げる。
Puku Puku Café
プクプクカフェ
リマでコーヒー文化を牽引する地元発のカフェチェーン。中心街の3店舗のほか、リマの大学構内とペルー第二の都市アレキパで営業中。愛らしい鳥のロゴマークでコーヒー産地の豊かな自然をアピール。
■ http://pukupuku.pe/
Neira Café Lab ネイラ・カフェ・ラブ
リマの高級住宅街ミラフローレスの裏通りにある「ネイラ・カフェ・ラブ」は、2018年7月に、開業からようやく1年を迎えた新しいカフェだ。
それでも、店員と談笑する犬を連れた客や、新聞を広げてゆっくりと朝食をとる客の姿から、エリアで馴染みの場所となっていることが感じられる。
「地区の皆さんに親しんでもらおうと、店の正面をガラス張りにしました。焙煎からサービスまで、営業のすべてをお見せしています」と店主のハリー・ネイラさん。その堂々とした笑顔は、充実したカフェ経営の証のようだった。
ネイラさんとコーヒーの関係は少年時代にさかのぼる。子供のころ、コーヒーの産地ピウラ市にある父の生家で、祖母とともに畑でコーヒー豆を採集し、薪でコーヒーを焙煎したそうだ。
大人になってからは、コーヒービジネスへの憧れが募る一方で、バリスタ大会に三度出場し、2014年には国を代表してイタリアにも行った。やがて競争に勝つことより自分らしさを求めたくなり、この店を開けたのだった。
美食の国での、コーヒーの可能性。
ネイラさんが取り扱うのはカハマルカ、クスコ、ビジャ・リカという3つの産地のコーヒー豆。それらを週4回、店内奥のロースターで焙煎する。ネイラさんにとって焙煎とは、コーヒー豆に情熱を注ぐひと時なのだそうだ。 焙煎した豆は、店でコーヒーをいれ、販売するだけでなく、レストランにも卸している。卸先の一つが、2018年度「世界ベストレストラン50」で6位に選ばれた「セントラル」だ。 「ペルーは、美食の国として知られています。コーヒーもまた、美食の要素として成長し、認識されていくように働きかけています」とネイラさん。 街角のカフェの居心地と世界でのペルーコーヒーの認知度という異なるベクトルで質を求める姿勢は、ネイラさんのコーヒー愛の強さゆえだろう。
Neira Café Lab
ネイラ・カフェ・ラブ
住宅街に立つ家族経営で小さなスペースのカフェ。客のほとんどは、地域住民か近辺で働く人で、スタッフと親密な会話を交わす常連客が多いようだ。2019年にはミラフローレスに2号店をオープン予定。
■ https://www.facebook.com/neiracafelab/
Eusebio & Manolo エウセビオ&マノロ
かつてのインカ帝国の首都であり、16世紀にスペインによって征服されたクスコは、南米随一の歴史都市だ。マチュピチュ観光への拠点として客足は伸びる一方で、旧市街地の商店、飲食店もまた年々増えている。
「エウセビオ&マノロ」は、街で最も古い教会であるサンブラス教会へと通じる小路にある。白い外壁がまばゆい、昔ながらのコロニアル建物の一室で営業している。
「南スペインのムーア人の建築そのものでしょ?」と気さくに問いかけるオーナーのアルビート・アロンソさんは、クスコ在住6年のスペイン人だ。
開業は2015年12月。外国人観光客が多いにもかかわらず、当時クスコには、自らがヨーロッパで馴染んだようなカフェがなかったという。「それならば!」と10㎡の小さなスペースを借りて開けたのがこの店だ。
小さなカフェならではの、お客様との気さくな会話。
世界的な観光地とあって、来店者の8割は観光客だ。見どころが尽きないクスコだが、3400mという高地にあり、石畳の坂道が多い。散策に思いのほか体力を消耗するため、道すがら出合ったこのカフェに、ひと時の憩いを求めて立ち寄る客が多いようだ。 現在、コーヒー豆は国産一種類を使用しているが、年末までにコーヒーミルを増やして複数の豆から選んで飲んでもらえるようにしたいという。加えて2号店の経営も検討中だ。 「街の中心のアルマス広場近くに、ここと同じような小さな店舗を開けたいです。観光客の多くは、一生に一度きり、しかも数日しかクスコに滞在しません。せっかくなので、お客様には街歩きのアドバイスをして差し上げたい。小さな店だとお客様と気さくに話すことができます。それが、小さなカフェにこだわる理由です」 コーヒーを飲みながらアロンソさんの穏やかな口調に耳を傾ければ、その後の散策に新たな行先が加わるかも。
Eusebio & Manolo
エウセビオ&マノロ
歴史情緒あふれるクスコで、スペインのビルバオ出身のオーナーが営む小さなカフェ。クスコは観光客の往来が絶えないが、このカフェは落ち着いたたたずまいの小路で、憩いのひと時を提供している。
■ https://www.facebook.com/EusebioyManolo/
La Valeriana ラ・ヴァレリアーナ
街の中心アルマス広場から1ブロックにあるラ・メルセー教会は、その宝蔵館のきらびやかな展示品と美しい中庭が魅力の観光名所だ。
その真正面に位置する「ラ・ヴァレリアーナ」の、回廊の席を選べば、荘厳な教会の門構えを眺めながら、コーヒーのひと時を楽しむことができる。
その昔ホテルのロビーだった店舗スペースは、白を基調としたカジュアルな内装が居心地を演出しており、街歩き半ばの観光客の訪れが絶えない。
「お客様がくつろぎ、楽しんでいる様子をうかがうのが一番の喜びです」と言うオーナーのヒセレ・ディアス・ニシヤマさんは、クスコに入植した日本人移民の末裔だ。一家は代々、クスコで商店を営んでおり、ニシヤマさんもこれまで16年にわたり、いくつかの飲食店を経営してきた。
初めてのカフェ経営に、感じる手応えと喜び。
「ラ・ヴァレリアーナ」は5年前に市内の別の場所に1号店が、2年前にこの2号店がオープン。いずれも観光スポットの目の前に位置する。 「この店舗は、公益法人が所有する不動産で、入札を経て私たちが営業することになりました。観光地ゆえ立地選びがとても大切です」とニシヤマさん。 「カフェの経営は、『ラ・ヴァレリアーナ』が初めてなのですが、これまで経営してきた飲食店のなかで、最も集客の多い店です」とカフェの事業に手応えと喜びを感じているようだ。 店の自慢は約30種のパティスリー。そのなかでも目を引くのが、虹色のクスコ市の旗にちなんだカラフルなケーキ「ウニコルニオ・ネイキッド」だ。子供ならずとも童心を失わない客に人気の様子だ。コーヒーは、クスコ県キジャバンバ市産の豆を使用している。目下、リマとペルー第二の都市アレキパでの営業を計画中で、隣国でのフランチャイズの誘いも受けているそうだ。クスコ発のコーヒー&スイーツが国内外に広がるか、今後の展開が楽しみだ。
La Valeriana
ラ・ヴァレリアーナ
クスコの2か所の観光スポットのそばで店舗を経営する洋菓子中心のカフェテリア。鎮静作用のある薬草ヴァレリアンを店名に、観光客に安らぐコーヒーのひと時を提供している。客の6割が外国人観光客だ。