COFFEE BREAK

世界のコーヒー

世界のコーヒー-World-

2021.06.01

デパートの家電売り場で家庭用コーヒーマシーンが絶好調 ロンドンから

世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。新型コロナウイルス感染症が流行するなか、イギリスでもコーヒー業界の新たな挑戦が始まりました。まずは、イギリスを代表するデパート「ジョン・ルイス」の家電売り場におけるコーヒーマシンの販売展開を紹介します。

デパートの家電売り場にて、家庭用コーヒーマシーンの販売が絶好調。

Vol.127 イギリス・ロンドンから。


春にお目見えしたジョン・ルイスのコーヒーマシーン「実演&お試しコーナー」。コーヒー豆、ミルク、マグカップなど一式が揃い雰囲気はキッチンそのもの。より美味しい一杯を追求し高級マシーンを購入する層は、30代からリタイア世代までさまざま。


 昨年11月22日に発行されたタイムズ紙日曜版の経済欄に、ほぼ1ページの紙面を使い大きく掲載された記事がある。「コロナで破れたコーヒー・バブル」と題されたこの経済記事は、昨春にイギリス全土で強行された都市封鎖のため休業に追い込まれたカフェの行方を案じる内容であった。
 サバイバル案とし、郊外型スーパーやショッピングモールへの積極的な出店、また「密」を避けるには最適なドライブスルー式のカフェ経営を提案している。そして、オフィスワーカーたちは通勤途中にテイクアウトしていたコーヒーを在宅勤務に切り替わったあとも同じように求める傾向があることにも注目した。ただし、単なる"朝の一杯"ではない。在宅でゆとりの時間が増えたため、コーヒーの味にこだわるようになったのだ。加えて、都市閉鎖で外出機会が減ったため、手元に残る可処分所得が増え、自分へのご褒美とし高価なコーヒーマシーンを購入しているという分析も発表されている。


[左]キッチン家電が充実していることで有名な老舗デパート、ジョン・ルイス本店。Photo Courtesy of John Lewis & Partners[右]昨年まではお手頃なカプセル式がよく売れていたが、現在は本格的な粉砕機能が付いたコーヒーメーカーにシフトし、値段に糸目をつけない傾向がある。


 ここに目をつけたのが、イギリスを代表するデパート「ジョン・ルイス」だ。キッチン家電売り場でひときわ大きなスペースを占領し、家庭用コーヒーマシーンの販売を勢いよく展開し始めた。品揃えは、初心者向けのカプセル式コーヒーマシーンから、粉砕とミルクスチーマー付きで約40万円もするプロ級レベルの製品までバラエティーに富んでいる。ジョン・ルイスによると、都市閉鎖後の1カ月間のみで、コーヒーマシーンの売り上げが33%上昇したという。同時にマグカップの売り上げも着実に伸びたという報告もでている。


[左]在宅勤務になり、至福の一杯、マイ・コーヒーのために、マイ・マグカップにこだわる人が増えたそうだ。1500円前後のものがよく売れている。[右]コンパクトなサイズだが、機能満載のイタリア製品は約27万円。Photo Courtesy of John Lewis & Partners


 ただし、問題点も出て来た。せっかく買ったコーヒーマシーンの機能をフルに使いこなせていない購入者の存在である。ボタンを押せばラテやエスプレッソが出てくるくらいの感覚で値が張るマシーンを買ってしまい、結局は台所の隅で無用の長物になってしまう。その問題解決のため、今春このデパートではコーヒーマシーン売り場に「実演&お試しコーナー」を新しく設置した。マシーン選択のアドバイスはもとより、購入希望のマシーンを実際に使い、粉砕から抽出、ミルクスチーマーでフロスを仕上げるまでの全過程をスタッフの懇切丁寧な指導で学ぶのだ。こだわりのコーヒーを自宅で嗜むため、数十万円も投資するコーヒー愛好家に、事前サポートを提供できるかどうか。このようなきめ細かなサービスが売り上げに反映されることを切に願っているジョン・ルイスである。なおイギリスでは、在宅勤務の傾向はこのまま今年も続くと予想されている。

〈店情報〉
John Lewis (ジョン・ルイス) 本店 300 Oxford Street, London W1, England www.johnlewis.com 営業時間 10:00~19:00(月~水) 10:00~20:00 (木~土) 12:00~18:00 (日・祝) Tel. 020 7629 7711
*1ポンド=約152円(2021年5月現在)
写真・文=香川道子(ロンドン市在住)
更新日:2021/6/1
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