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COFFEE BREAK
世界のコーヒー-World-
コーヒー消費大国、ルクセンブルクのカフェ。
コーヒー消費大国、ルクセンブルクのカフェ。
隣国からコーヒーを買いに来る人が多く、人口の約1/3にあたる数の越境通勤者がいるルクセンブルクは、統計上では人口ひとり当たりのコーヒー消費量が世界一。
新しいコーヒー文化がゆっくりと広がり始めたこの国で、パイオニアたちが開いたカフェにはさまざまなストーリーがあった。
Knopes Artisan Torréfacteur/クノペス・アルティザン・トレファクチュール
ルクセンブルク市の郊外にある「アム・ガレージ」は、レストランやデリカテッセン、デザインショップが入った商業施設。新しいグルメスポットとして人気がある。1936年創業の焙煎工房「クノペス・アルティザン・トレファクチュール」の拠点もここだ。ガレージを改築した大きな建物の一角に、焙煎所、カフェ、ショップが配置よく並んでいる。
もともとはベルギーの焙煎工房である同社は、2002年、ルクセンブルク市内の繁華街に「クノペス・コーヒーショップ」をオープンしている。そして2014年、4代目オーナーのファビアン・クノペスさんがビジネスの拠点をルクセンブルクに移転し、このカフェ兼焙煎工房を開いた。
浅煎りで、自然のフレーバーを引き出すファビアンさんの焙煎には定評があり、一般消費者だけではなく、多くのカフェにも豆をおろしている。この店で出しているコーヒーの味に感動し、いれ方や器具のアドバイスを求めるお客さんも多い。
コーヒーシーンを牽引する、老舗焙煎工房の4代目。
22歳の時、ファビアンさんは家業に加わった。「秘伝のブレンドこそ焙煎の命」と信じ、頑なに伝統的な深煎りを通した祖父と、いち早く単一銘柄のグルメコーヒーに注目した父との対立を目の当たりにしながら、彼は仕事を学んでいったと言う。
長い歴史と実績を持つ彼らにとって、新しいコーヒー文化が普及していないルクセンブルクは、まさに手つかずの新天地だった。だがその反面、この街には、自国でハイスタンダードなコーヒーに慣れ親しんだ外国人駐在員も大勢いる。「ここは、ロンドンやパリのように最先端を行く街ではないが、それらの大都市から人々が集まってくる。つまり、新天地なのに、ハイレベルなコーヒー通がすでに多く存在するというユニークな市場なんです」
その興味深い市場を、ファビアンさんは先駆者として開拓しているのだ。
1936年創業のベルギーの老舗焙煎工房が運営するコーヒーショップ。ルクセンブルクのコーヒーシーンのパイオニアで、自然のフレーバーが引き立つスローコーヒーがこの店の自慢。
■ http://www.knopes.com/
Bloom coffee shop/ブルーム・コーヒーショップ
2016年秋にオープンした「ブルーム」は、フランス人のラウレント・ボウさんとアレキサンドレ・ジャンコヴスキさんが運営するカフェだ。ルクセンブルク駅近くの活気ある商店街にあるが、一歩店に足を踏み入れるとそこはまるで別世界。ゆっくりと時間が流れるミニマリスティックな店内に、優しい癒しの空間が広がっている。
世界中を旅して見つけた、自分が求めるカフェのかたち。
「ブルーム」という言葉にはいくつかの意味があると、ラウレントさんは説明する。「コーヒーをいれる時、蒸らしで豆が膨らむこと。花。そして開花。美味しいコーヒーとともに、花が咲くように幸せが開花していくイメージで、この店名を決めました」
フランスのサン・タヴォルという小さな街の出身のふたりは、25年来の友人だ。アレキサンドレさんはグラフィックデザイナー、ラウレントさんは食品会社の社長として活躍していた。
ところがラウレントさんは、いつしか従業員3000人をかかえる食品会社社長という重圧の中で、自分を見失って行ってしまったのだと言う。
「4年前、仕事を辞めて旅に出ました。その中で私を癒してくれたのが、旅先で立ち寄ったカフェ。世界中どんなに小さな街にも、素敵なカフェがありました。そこで心のこもった手作りケーキと味わい深いコーヒーに出会えた時には、本当に心が和んだものです。そして私も、旅を終えたらそんなカフェを開きたいと思うようになりました」
そう振り返るラウレントさん自身も、帰国後アレキサンドレさんと共に始めたこの店で、味わいのあるコーヒーと手作りケーキをサーブしている。
「ブルームでひとときを過ごした人が、入店した時よりも少しでもハッピーな気分で帰って行ってくれること」
これがふたりの座右の銘だ。
美しいインテリアに囲まれて、心のこもったスローコーヒーとホームメイドフードを楽しむ。そんなひとときが、ささやかな幸福感を育むようにというオーナーの願いがこもったカフェ。
■ https://www.facebook.com/bloomluxembourg/
Ready?!/レディ?!
アートスクールや高校など、4つの学校が林立する学生街のカフェ「レディ」は、朝7時のオープンと同時に、通勤通学途中の若者で一杯になる。
レディ?!のオーナーは、コニー・サンクチュアリさんとユキ・ビヘルさん。幼なじみのふたりは、3年前にこの店をオープンした。そのきっかけになったのは、10年前にロンドンで過ごした時の体験だ。ユキさんはこう振り返る。「ほどよい焙煎の美味しいコーヒーと、手作りフードをサーブするという新しいカフェの文化に初めて出会いました。それは、ルクセンブルクではまだ見たことがなかったもので、とてもインスパイアされました。それからずっと、ふたりで店を開くことを目標にしてきたんです」
そんなふたりが作り出すケーキや軽食には定評があり、常連客にも人気が高い。けれども、「私たちの原点は、やっぱりコーヒーなんです。美味しいコーヒーがなければ意味がない」とユキさんは明解に続けた。彼女たちが選んだのは、古都エヒタナハにある、品揃えの豊富な焙煎所だ。今レディ?!では、ブラジルとインドのミックス、そしてエチオピアの豆を使って、香り高いコーヒーをサーブしている。
美味しいコーヒーと自転車が、レディ?!のトレードマーク。
お洒落なインテリアも、この店の特徴のひとつ。電線のケーブルドラムをペイントしたテーブルや、運搬用パレットを積みあげたソファなど、センスのよいDIY感が溢れている。中でも一際目を惹くのは、入り口横の壁にディスプレイされた自転車。オープン当時、ロードバイクで店に通っていたふたりが、駐輪の場所に困って壁にかけてみたところ、この店にぴったりな雰囲気を醸し出したことからディスプレイに採り入れた。自転車は、ふたりにとってコーヒーの次に情熱を注ぐもので、店のロゴにも使われている。
スポーティではつらつとしたふたりの「元気」が、店のすみずみまで行き渡る。レディ?!は、そんなカフェだ。
街の北部の学生街にある「レディ?!」は、気取らない雰囲気で若者に人気のカフェ。シンプルな店構えなので隠れ家的だが、朝、昼、そして夕方には学生と周辺のロコたちでいっぱいになる。
■ http://readycoffeeshop.lu/
Coffee Brunch/カフェ・ブランチ
「モーイエン!」(こんにちは)。店に入ると、オーナーのテッシー・スハーフさんの優しい声が響く。
落ち着いた色彩のインテリアは、レイアウトから壁に飾った小さなデコレーションまで、テッシーさんが自ら手がけた。「美味しいコーヒーとともに、ゆったりとしたひとときを過ごしてほしいという思いを込めて、インテリアを考えました」と言う。二人掛けの小さなテーブルが多いのも、ひとりで来るお客さんが、心地よい居場所を見つけやすいようにという心配りから。店内には、ほっと落ち着く、アットホームな雰囲気が溢れている。
2016年の春「カフェ・ブランチ」をオープンするまでは、教鞭を執っていたテッシーさん。カフェを持つことが、長年の夢だった。お料理上手でコーヒー通、人と触れ合うことが大好きという彼女にぴったりの第二の人生が、このカフェだったというわけだ。
流行の味をきっかけに、奥深いコーヒーの世界へ誘う。
この店の人気メニューのひとつに「コーヒー・オブ・ザ・モーメント」がある。バニラやモカ、キャラメルなどのシロップを入れたコーヒーのおすすめメニューで、カフェラテかカプチーノでサーブする。「ルクセンブルクでは、甘いシロップを入れたスイートコーヒーが大人気です。特に若い女性が集まる店では、たくさんの種類のフレーバーシロップを揃えています。私自身は、丁寧におとしたフィルターコーヒーのブラックが一番好きですが、多くの人が求めるコーヒーを扱うのも大切なこと。フレーバー入りのコーヒーが入門編となって、〝コーヒー〟という奥の深い世界を知っていくきっかけになればいいなと思っています」
オフィスや銀行が集まるエリアにあるこの店には、駐在の外国人常連客も多い。テッシーさんはお客さんにあわせて「ボンジュール!」「グーテンターグ!」と、瞬時に言語を切り替え会話を始める。国際色豊かなルクセンブルクならではの、素敵な光景だ。
旬の豆を使った本格的コーヒーが自慢のカフェ・ブランチ。有機食材を使った手作りランチは人気で、メニューも充実している。常連客が国際色豊かなのも、ルクセンブルクならではの特徴だ。
■ http://coffeebrunch.lu/