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COFFEE BREAK
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海外支援と若手生産者らの奮闘。グアテマラの生産者組合でみたコーヒーの可能性(前編)
グアテマラ北西部のウエウエテナンゴ県は、高地にあって質の高いコーヒー豆を生産する地域として知られる。同県のサンタ・クルス・バリージャス市(以下、バリージャス)で、長年オーガニック農法でコーヒー生産を行ってきたバリージャス農業組合(Asobagri:アソバグリ)を収穫真っ只中の2月上旬に訪れた。海外からの支援を受けながら、女性による生産と若手後継者の育成に注力する組合の現在とは?前編では、収穫の現場と海外支援による設備を紹介。
首都グアテマラシティからバスを乗り継いで北上することおよそ12時間。メキシコとの国境に近いバリージャスに本部を構えるアソバグリは、会員約1500人を組織するコーヒー生産者組合だ。昨年度のコーヒー輸出量は約1905トンと好調で、パンデミック中も生産・輸出量を伸ばし、2022年11月には以前のものより大きいコーヒー豆用の倉庫を新設した。
「大半のコーヒー豆はアメリカ向けですが、ヨーロッパや日本にも輸出しています」と青年部コーディネーター兼広報担当のロセンド・マルティネス・フランシスコさんが、出荷待ちのコーヒー生豆が山積みとなった倉庫を案内してくれた。
アソバグリの会員は105の集落にまたがり、乾燥されたコーヒー生豆は、生産者自らによって各地から搬入される。「私の母も生産者のひとりです。明日は私の家族のコーヒー農園を案内しますね」とフランシスコさん。組合の事務員もみな生産者の家族なのだ。
アソバグリの創設は1989年。内戦中だった当時、土地の生産者20人が生き残りをかけて、市場を開拓するために発足したものだった。バリージャスには現在でも道路が舗装されておらず、農地の集落には電気も通っていない。車道がなく自動車の往来ができない集落も多く、生産者の半分ほどがラバでコーヒー豆を搬送している。今でもそのようなのだから、創設当時の外部と隔絶されている感はことさらであっただろう。
もともと無農薬でコーヒーを栽培していたアソバグリの生産者にとって、オーガニック認証を取得するのは難しくなかった。1996年にはアメリカ農務省(USDA)のオーガニック認証とフェアトレード認証を取得。その後、1999年に組合として初めて17トンのコーヒーをアメリカに輸出して以降、フランス、カナダ、日本などへと販路を拡大してきた。
オーガニック認証はこのほか、ヨーロッパの「EUオーガニック」、主に中米諸国が参加している「マヤサート」を取得しているのに加えて、メキシコの小規模生産者認証「SPP」を取得し、主に海外のマーケットに対してコーヒーの品質と安全性をアピールしている。
集落内で協力して行われる手摘み作業
バリージャスの中心街から山道を車で移動すること約1時間15分、プエンテ・アルト集落にあるフランシスコさんの実家では、早朝から収穫されたコーヒー生豆の天日干しが行われていた。家屋に隣接する1.5ヘクタールのコーヒー農地を管理するのは今年59歳を迎えた母のイサベラ・フランシスコ・ドミンゴスさんだ。
農地を案内してもらうと樹木に覆われた山肌でコーヒーの木が鮮やかに完熟した実をつけていた。プエンテ・アルト集落には21世帯が暮らしており、コーヒーの実の手摘みは、互いに協力して行われている。
アソバグリの生産者は、主にブルボン、カトゥーラ、ティピカ、カティモール、そしてコスタリカ原産のビジャロボス、グアテマラ原産のパチェといったアラビカ種の亜種を栽培。フランシスコさんらの農地では今年、7年前に植えたビジャロボス種が初めての収穫を迎えた。突然変異種で、その木の枝には柔軟性があるために、実の収穫がしやすく、干ばつなどの悪条件に強いという特徴を備えている。甘みがあってボディが強いのが味の特徴だ。
海外からの支援による水資源と効率を考慮した設備
続いて訪れたのは、バベレルツァップ集落の小高い丘で農園を営むニコラス家。「この土地は土壌の質が良くなかったんです。オーガニックの堆肥の投与を繰り返して改良し、この5ヘクタールの土地で35年間、コーヒーを栽培してきました」と語る家長のライムンド・ニコラスさんはアソバグリ創設者20人のうちのひとりだ。
ニコラスさんの敷地には、コーヒー生豆乾燥用のビニルハウスとコーヒー生豆洗浄のための雨水の貯水槽などの装置が備わっている。これは作業効率の向上と水資源の有効活用を目的としてUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)などの支援で2021年に導入されたものだ。
「ハウスでは、その日の天候の良し悪しにかかわらず安定的に豆を乾燥できます」とひとり息子の後継者、マテオ・ニコラスさんは満足げにハウス内に招いてくれた。設備がライムンドさんの農園に導入されたのは長幼の序ゆえ。今後同様に30世帯に導入され、以後はアソバグリの指導で他の生産者にも普及することが期待されている。
アソバグリのように、世界には国際協力のもとに成り立っているコーヒー生産も少なくないだろう。様々な事情を知るにつけ、日々コーヒーを飲めることに感謝の気持ちが募る。