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食のプロにより深く、コーヒーを知ってもらうアトリエを。フランス・リヨン&パリから
Vol.130 食のプロにより深く、コーヒーを知ってもらうアトリエを。
フランス・リヨン&パリから 新型コロナウィルスの流行により、昨年3月から合計3回の厳しいロックダウンを経てきたフランス。外出制限令の間、外食産業に許された営業はテイクアウトと通販のみで、イートインは昨年11月から今年の5月19日まで、半年近く禁止が続いた。
この営業制限を、前向きに乗り越えることはできないか?様々な試みがなされた中、美食のプロにコーヒー知識を普及すべく努めた人々がいる。フランスの首都パリとリヨンの二都市で焙煎カフェを営む「ルッツァ」の面々だ。
「それまで多忙を極めていたレストラン業界の知人たちに、ロックダウンの影響で時間ができたのを知りました。ならその間に、シングルオリジンコーヒーについて知ってもらえないかと思いついたんです」
「ルッツァ」共同オーナーの一人、ギョーム・ラングロワさんは言う。カプセルコーヒーマシンの大手メーカーで15年間勤務したのち、2018年末にリヨンでスペシャルティコーヒーを扱う自家焙煎カフェを立ち上げた。ブルンジやコロンビア、エチオピア、インドネシアなど高度1200メートル以上の小規模農園で採れる生豆(大半は有機栽培)を直輸入し、店内で焙煎・小売をしつつ、高級レストラン向けのオリジナルレシピを開発。ロックダウン時はちょうど、プロ以上の向けの販路を拡大したいと考えていたところだった。
「フランスのコーヒーは街場のカフェを中心に独特の文化があり、量は飲まれていましたが、質はあまり良くありませんでした。生産地によって豆に様々な味わいやアロマの違いがあることも、知られていなかったんです。高級レストランでは、名シェフが緻密に味覚を計算した料理を出している一方、食後に提供するコーヒーはホール担当者が選んでシェフはノータッチ、という慣習もありました」
味覚に優れたシェフたちに、その料理世界に合ったコーヒーを自分で選んで欲しい。そのためにはまず、豆や焙煎、抽出について知ってもらう必要がある。そこで考えたのが、美食業界のプロに限定した、小規模のコーヒーアトリエだ。
「一回の参加者は6〜7人。コーヒーの基礎知識から始めて、焙煎、抽出、テイスティング、ディスカッションで3時間の内容です」
友人・知人の輪から声をかけたところ、続々と参加希望が寄せられた。ミシュラン二ツ星レストラン「ポール・ボキューズ」の総料理長ジル・ラインハルト、フランス最優秀職人(MOF)の称号を持つソムリエのファブリス・ソミエ、リヨンの老舗ショコラティエの3代目フィリップ・ベルナションと、フランスの美食業界を支える錚々たるメンバーだ。
「アトリエは"コーヒー・カラーのランデブー"と名付けました。私たちはコーヒーのアロマや味わいのバラエティをカラーパレットで表現していて、各コーヒーのパッケージも、そのアロマ・味わいの色を配置して作っているので、そこから取ったんです」
アトリエは大いに盛り上がり、3時間の予定のはずが、終わってみれば5〜6時間が経過していた。その後、コーヒー豆を取り入れたオリジナル料理や、新しいお菓子のレシピを作ったシェフたちもいる。
「コロナ禍前の彼らなら、そんなに時間を割くことはできなかったでしょう。これまでリヨンで2回、パリで1回開催し、毎回好評でした。今後もぜひ、続けていきたいですね」
フットワークの軽いアトリエ運営が可能なのは、リヨンに4箇所・パリに2箇所ある店舗のすべてに焙煎機を置いているから。店頭で焙煎したてのフレッシュな豆を届けようと、焙煎時間をSNSでアナウンスする。そのスタイルと芳香はどの街角でもすぐに顧客を惹きつけ、近隣の食関係者の注目を集めている。
ルッツァ・トレファクトゥール LOUTSA Torréfacteur 1 rue de Bazeilles 75005 Paris www.loutsa.fr