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COFFEE BREAK
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世界のコーヒー-World-
Vol.26 ドイツ:ノルト・コースト・コーヒー・ロースタリー(Nord Coast Coffee Roastery)
ドイツの港町ハンブルグ。コーヒー愛好家の間では「カールスバード・ポット」がひそかな話題となっています。Vol.26では、カールスバード式コーヒー世界選手権のチャンピオンが登場。9月末にオープンしたばかりのニューフェースです。
カールスバード式コーヒー、世界一の一杯を。
Vol.26 ドイツ:ノルト・コースト・コーヒー・ロースタリー(Nord Coast Coffee Roastery) www.nordcoast-coffee.de
グリーングレーの空間に銅のランプシェードやフィルター、木の家具が温かい雰囲気。集中してキリッとコーヒーを入れてくれるパウラ。もうひとりのオーナー、ヨルンとともに醸しだす空気もコーヒーの美味しさに影響を与えているのかもしれない。
コーヒー貿易の長い伝統を持つ港町、ハンブルク。数多くのコーヒー焙煎&生豆大手商社が拠点を置くこの町で、ここ数年続々と若手が独立を始めている。
「ノルト・コースト・コーヒー・ロースタリー」は、倉庫街の裏手に広がるオフィスの一角に9月末にオープンしたばかりの焙煎所兼カフェだ。オーナーのヨルン・ゴルゾラとパウラ・メンデスは、前出のカフェ「シュパイヒャーシュタット・カフェレステライ」で出会った。パウラはブラジル出身。コーヒー農園を営んでいた祖父は、時々暖炉で豆を煎って家族のためにコーヒーをいれてくれていたそう。「焙煎の香りで子どもの頃の思い出が蘇って......。この香りがあるところが私の故郷なんだと思った」とパウラ。彼らが重視する豆本来の味と香りの繊細なニュアンスを混じりけなく再現してくれるいれ方として注目しているのが、カールスバード・ポットだ。
[上]プライベートでもコーヒーが好きでたまらないというヨルンとパウラ。2人は旅に出る時もテーマはコーヒー。自分の店を持つのが夢だったという。[下]カールスバード・ポット世界選手権の優勝カップ。昨年は2人で出場しパウラが1位、ヨルンが2位。今年はヨルンが1人で出場して見事1位を獲得した。
20世紀初頭に開発された紙やメタルのフィルターを用いないポットは、シンプルだがいれ方や挽き方にもコツがあり、全ての豆や焙煎に適している訳ではない。パウラとヨルンは昨年と今年ベルリンで開催されたカールスバード・ポットの世界選手権に自家焙煎した豆を持って挑戦し、見事2人とも1位を獲得した。現在5種類あるオリジナルローストの中でもこのいれ方に合うとパウラがお薦めするのがタンザニア産の「アムケニ」。カールスバード・ポットを使えば苦みはほとんど抽出されないので、オレンジの香りとナッツのような甘さがふわっと口の中に残る。少し温度が下がるとまた味が変わってくるのが面白い。バウハウスデザイン的なシンプルなポットで、たっぷり2カップ分がいれられるので、その変化も楽しんでもらえる。
[左]カールスバード・ポットのポイントは繊細な陶器製の二重フィルター。手作りとは思えない細かさだ。 [中]現在5種類あるオリジナルローストから、1800mの高地で育つタンザニア産の豆を明るめに焙煎したものをセレクト。マイルドで飲みやすいのはカールスバード式ならでは。カールスバード式コーヒー(1ポット4.10ユーロ)。 [右]運河を見下ろす明るい2階席。北欧モダンなインテリアとコーヒー豆の香りに囲まれて。
開店して数日、早くも常連客がつきはじめた。銀行や弁護士事務所など、価格よりもクオリティ重視の人が多い地区を厳選したというだけあって、お客はみな興味津々。カールスバード・ポットの存在を知る"コーヒー専門家"も多い。一人一人丁寧に対応し、美しい動作でポットを操っていく2人。いれるのに時間はかかるが、その時間をも楽しむのがこの店の流儀だ。
「ハンブルクのコーヒーの伝統は長い。だからこそまだ保守的。
でも生豆自体は多彩なラインナップが少量からでも手に入りやすい環境にある。あと数年で、ロンドンやベルリンに負けないくらいコーヒーシーンが活発になるはず。私たちがそれを証明してみせますよ!」と意気込む2人。ノルド・コーストはハンブルクコーヒーシーンの台風の目になりそうだ。