世界中で愛されるコーヒー。楽しみ方、味わい方は、お国柄によっても千差万別です。コーヒービジネスもまた、その都市ならではのチャレンジを重ね、さまざまな広がりを見せています。
アメリカ、ロサンゼルスでは、サードウェイブが定着し、人気のコーヒー専門店は豆の生産環境や焙煎にこだわったハンドドリップのコーヒーを楽しむ愛好家でいつも賑わっています。そんなロスでいま話題なのは、自宅でコーヒーを楽しむためのオリジナルグッズ。Vol.28では米国産のくるみの木でつくるドリッパーなど、温かみのあるコーヒーグッズをご紹介します。

米国産のくるみ材を使ったドリッパーやスタンドが人気。

Vol.28　アメリカ：コーヒーレジストリ　ドリッパースタンド（Coffee Registry Pour-over Stand）
シルヴィア・ソングドリッパー（Silvia Song Walnut Dripper）
thecoffeeregistry.com
www.silviasong.com

　街中のカフェで飲むコーヒーとは別に、家でリラックスしていただくコーヒーだからこそ、丁寧にいれたい。そうしていれる一杯はパーソナルな儀式であり、自分への小さなギフトや励ましでもあるように。自分流のコーヒーのためにお気に入りのグッズを揃えることも、大事なプロセスの一部だ。
　ロサンゼルスの海岸沿いにあるプラヤデルレイの食雑貨ショップ「トリプリキット」やヴェニスのライフスタイルセレクトショップ「ジェネラルストア」では、アーティストや職人が作るくるみの木を使ったコーヒーグッズが人気だ。

　プラヤデルレイはのんびりしたビーチタウン。近年ITベンチャーの集結、いわゆるシリコンビーチの波を受け、流行最先端のレストランやおしゃれな雑貨店が急増中だ。活気溢れるレストランとして注目されている「ザ・トリペル」や「プラヤプロヴイジョンズ」のオーナー夫婦がオープンした食雑貨のショップ「トリプリキット」には、料理本やカクテルキット、グルメ食材、キッチングッズとともに、オリジナルローストのコーヒーや作家によるコーヒーカップが並ぶ。
　ひときわ存在感があるのはヴィクトリア調の真鍮と米国産のくるみ材、ガラスなどを使った「コーヒーレジストリ」のドリッパースタンド。１つ１つ、オーダーを受けてから作るので、オーダーから入手まで数週間かかるのだが、それでもお客はひきもきらない。カップやカラフェ対応で数タイプがあり、昔ながらの実験室を彷彿させるデザインや重厚な質感も、このコーヒースタンドの人気の理由だろう。

　一方、ヴェニスの「ジェネラルストア」でも目を引くのが、米国産のくるみ材を用いたコーヒーグッズ。北カリフォルニアのアーティスト、シルヴィア・ソングがくるみ材を１つずつ削りだして作るドリッパーだ。仕上げにはコーヒーオイルをブレンドしたワックスを使うという、コーヒー愛好家の心をくすぐるこだわりだ。木の温もりと優しい色あいがコーヒータイムを落ち着いたひと時にしてくれる。毎日このドリッパーを好きなカップにのせれば、それだけでしあわせが少し増すようだ。
　作り手の思いが伝わる作家マグやこだわりの道具。コーヒーを自宅で楽しむためのサードウェイブの派生で、またコーヒーの新たな可能性が広がっているようだ。

＊1ドル＝約120円（2015年10月現在）
写真＝鈴木香織
文＝稲石千奈美
ロサンゼルス市在住

更新日：2015/11/15