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Vol.5 イタリア:フィオライオ・ビアンキ・カフェ(Fioraio Bianchi Caffe)
イタリア・ミラノでは「異業種とのコラボレーション」バールが話題です。経営に行き詰まったさまざまな業種の店舗──書店やバイク屋、花屋、ブティックなど──が、新たにバールを設置することで起死回生をはかってきました。
Vol.5では、ミラノでも人気の「コラボ・バール」を紹介しましょう。元花屋の【フィオライオ・ビアンキ・カフェ】は10年前のオーナーの手紙がきっかけで生まれかわり、成功を収めています。
閉店を告げた花屋の主人に、バールがラブコール。
Vol.5 イタリア:フィオライオ・ビアンキ・カフェ(Fioraio Bianchi Caffe)
www.fioraiobianchicaffe.it/
イタリア人はコーヒーなしでは生きていけない、といっても過言ではない。
朝はコーヒーにブリオッシュ、昼はパスタやサラダ、サンドイッチの後にコーヒー。夕方、仕事が終わる頃にまたコーヒーかアペリティフ(食前酒)、そして、夕食後にまたコーヒーを飲むというのだから。
住宅街にある「フィオライオ・ビアンキ・カフェ」にも、朝から夜までコーヒーを飲む客が引きも切らず訪れ、このゾーンに住む人々の憩いの場となっている。この店を訪れた客は皆、店内の至るところにディスプレイされた花やグリーンに目を奪われるだろう。それもそのはず、この場所では半世紀にわたって花屋が営まれてきたのだ。
「フィオライオ・ビアンキ・カフェ」がバールとして再生したのは、今から10年前のことだ。
花屋のオーナー、レイモンド・ビアンキさんがウィンドウに貼った自筆の手紙がきっかけ。そこには、「44年続けてきた花屋だが、家賃が高くてやっていけない。残念だが閉店することを決意した」というメッセージが書かれていた。その手紙を読んだ近所に住むある投資家が、「この店を譲ってくれないだろうか。僕はここでバールを開こうと思う。そして、レイモンドさんの花も売りたいんだ!」と言う誘いをかけてきたのだ。
こうして、花屋×バールというコラボレーションの店が成立した。
それから10年。84歳になったレイモンドさんはいまも花の仕事を続け、元気に毎日を送っている。レイモンドさんの花のセレクトや生け方は独特な世界を醸し出していて、バールはまるでギャラリーのような心地よい空間となっている。そんな花に囲まれてコーヒーを味わい、ゆったりとした時間を過ごす気分は格別だ。
店の奥ではイタリアの地中海料理も提供。ランチコース22ユーロ、ディナーコース60ユーロの少し高級ビストロとなっている。デザートもすべて手作りで、モンブラン、リンゴのタルト、パンナコッタなどクラッシックでシンプルなラインナップ。 ここで大切なのがコーヒーだ。イタリアには美味しいコーヒーはたくさんあるが、とくにイタリア人が愛着を持つ地元のコーヒーブランドにしたという。ミラノの水には石灰成分が多く溶け込んでいるため、大規模な浄水器を設置し、クリアな水でコーヒーをいれている。バールマンの日課は、コーヒーマシンのバルブの掃除と圧力の調整だ。少しの気遣いがコーヒーの香りと味の違いをもたらすと語る。ディレクター、レネさんの存在も大きい。フランス人であるレネさんのエキゾチックな美的センスはこのバールの演出に一役かっている。それに、彼のフランスなまりのイタリア語はなぜかミラネーゼの気分を浮き立たせるらしい。
ミラノの人は老舗にリスペクトを持ち、他の業種や文化とコラボレーションをしてまた活性化していき、長く続いた歴史を守ろうとしている。世代を超えて職人の技を引き継いでいく、その姿はすばらしい。イタリアでは、伝統を守っていくためにさまざまな手法が生まれているのだ。
フィオライオ・ビアンキ・カフェ( Fioraio Bianchi Caffe )
Via montebello 7 20121 milano
Tel.02・2901・4390
8:00〜24:30 日休