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世界のコーヒー-World-
Vol.68 イタリア:カフェ・マンフレディ Caffe Manfredi
ミラノには、かつてコーヒーの焙煎所が100以上もあったと言われていますが、いまでは10軒ほどになっています。法律に準じ、焙煎所に改装を重ねてきたカフェを訪ねました。
焙煎所の場所は変わっても、コーヒーの味は変わらない。
Vol.68 イタリア:カフェ・マンフレディ Caffe Manfredi www.caffemanfredi.com ミラノの中華街の中、パオロサルピ通りにある「カフェ・マンフレディ」は、カウンターのみでコーヒーを供する昔ながらのカフェだ。人気の秘密は自家焙煎の奥深い味のオリジナルコーヒー。くいっと流し込む一杯の香り高いエスプレッソを求めて、イタリア人はもちろん、中国人、日本人、アメリカ人と幅広いインターナショナルな客が一日に何百人もひっきりなしに訪れる。
50年の歴史を持つコーヒー焙煎所「トレファツィオーネ・カラカオ・ドゥ・ブラジル」をパオロさんとチェーザレさんのギディーニ兄弟が買い取ったのは15年ほど前のこと。安定した品質の大手メーカーの豆が流通するようになったことや、おしゃれな大手コーヒー店が台頭してきたことなどが理由で、手間がかかる割に利益の少ない自家焙煎から撤退する店が増えていった。ミラノに100軒以上はあったと言われる焙煎所が次々と姿を消していく中で、ギディーニ兄弟は2日に一度は豆を煎り、独自の香り高く軽やかなコーヒーを追究してきた。そんな二人の煎るコーヒーはまたたく間に大評判を呼び、一日に何百人もの客が訪れる人気カフェとなったのだ。
そんな店に転機が訪れたのは4年前。それまでも約20年前に導入された厳しい安全基準HACCPをクリアできるよう、古い設備の焙煎所に改装を重ねて努力してきたが、ついに換気に関する法律が変更されたのだ。壁に換気のための穴を開けることができないこの古い建物では、店内での焙煎を続けることができなくなってしまった。選択を迫られたギディーニ兄弟は人気の味を守るため、郊外に焙煎工場を建てて焙煎作業を丸ごと移転することを決めたという。
新しい工場では室内温度を一定に管理し、豆の焙煎にかける時間は15〜20分ほど、温度は215度から220度、密封した袋に詰めて店内に運ぶまで、すべて記録し、数字で厳密にコントロールしている。ほんの数年前までは店内で2日に一度は客の顔を見ながら豆を煎り、その横でコーヒーを入れていたことと比べるとすっかり様変わりした。
「いまの方法が本当にいいのかはわからないが、安全基準の規定は厳しくなるばかりでそうしないと店を開けていられないのが現状なんです」とパオロさんはため息をつく。「安全に人を守るための規定だけれど、コーヒー焙煎の文化や伝統がますます失われていってしまうのは淋しい」とも。
以前のような店内焙煎の様子が見られるのは月に一度程度になってしまい、焙煎の香りを楽しみながらコーヒーを飲むことができなくなってしまったのは客としても少し淋しいが、愛されているコーヒーの味が変わらないのは嬉しい限りだ。今日もおなじみの一杯を求めて、多くの客が訪れる。
カフェ・マンフレディ Caffe Manfredi www.caffemanfredi.com via Paolo Sarpi 6, 20154 Milano, IT Tel (+39) 02344633 営業時間 7:00〜19:30 休:日