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2025.01.20

コーヒーが花粉症などのアレルギー症状を緩和する?

コーヒーが花粉症などのアレルギー症状を緩和する?
1月からスギ花粉が飛び始め、本格的な花粉症シーズンがやってきました。
くしゃみや鼻のムズムズ感に悩まされている人も多いのではないでしょうか。
実は、普段何気なく飲んでいるコーヒーに、花粉症をはじめとするアレルギー症状を緩和する効果が期待できることをご存じでしょうか?
コーヒーを日常生活に取り入れて、花粉の季節を快適に乗り切りましょう!
杉本 幸雄先生

教えてくれたのは...... 杉本 幸雄先生

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬学系)炎症薬物学研究室 准教授。岡山大学薬学部を卒業後、株式会社大塚製薬工場に入社。リウマチ研究に携わる。岡山大学薬学部助手を経て、2003年から現職。専門はアレルギー性疾患。2015年に論文「コーヒー成分によるアレルギー性鼻炎の緩和について」を発表。大のコーヒー党でもある。

花粉症、アレルギーとは?

花粉症、アレルギーとは?

アレルギーは、体が異物(アレルゲン)に対して過剰に反応し、異物を排除しようとする免疫反応です。アレルゲンが体内に入ると、免疫グロブリン*1である「IgE抗体」が、アレルゲンから体を守るために化学伝達物質を放出し、異物を外に出そうとします。しかし、同時に血管や末梢神経も刺激するために、くしゃみ、目・鼻のかゆみといった、不快な症状が引き起こされます。
*1......異物が体内に入った時に排除するように働くタンパク質。

日本では、人口の40〜50%が何らかの花粉症に悩まされています。特にスギの植林が多いためにスギ花粉症が圧倒的に多く、日本の花粉症の約8割がスギ花粉症だと考えられています。花粉症は世界中で見られ、地域によって飛散する植物が異なります。

花粉症の原因植物

スギ花粉症:1月〜4月に飛散。1963年に発見されたアレルギー。
ヒノキ花粉症:3月〜5月に飛散。スギ花粉症とダブルで発症する人も多い。
ブタクサ花粉症:9〜10月に飛散。アメリカで1900年頃発見され、アメリカ人の約10%が悩まされている。スギ・ヒノキとあわせて「三大花粉症」と呼ばれる。
イネ科花粉症:ススキなど、イネ科植物が原因。1873年、ヨーロッパで牧草のカモガヤから発見された。

花粉以外にアレルギー性疾患を引き起こす原因として、チリダニ類(コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ)があります。これらは気管支ぜんそく、鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎などを引き起こし、小児ぜんそくの90%、成人のぜんそくの50%以上がチリダニ類によるものとされています。

杉本先生 花粉症の症状を抑えるためには、症状に適した治療薬を摂取することが有効です。また、花粉の侵入を防ぐことが何よりも重要です。花粉は主に、鼻と口から体内に入るため、マスクやゴーグルなどで、侵入経路をふさぐ対策を心がけましょう。

コーヒーがアレルギー症状を緩和させる理由

コーヒーがアレルギー症状を緩和させる理由

杉本先生の研究では、コーヒーに含まれるポリフェノールの一種「クロロゲン酸」に着目し、アレルギー症状への効果を調べました。アレルギー性鼻炎モデルとアレルギー性皮膚疾患モデルの2種類のマウスに対し、クロロゲン酸含有水(0.03%、0.1%、0.3%)を継続的に与えて観察しました。

その結果、アレルギー性鼻炎モデルのマウスでは、クロロゲン酸含有水を飲むことで、くしゃみと鼻掻きの回数が抑えられたという結論に。クロロゲン酸含有水を与える時期によって「予防効果」と「治療効果」の2つを測定したところ、いずれにも効果が認められました。

この結果から、「コーヒーの継続的な摂取は、アレルギー性疾患の緩和に有用である」と考えられます。

杉本先生 この研究では、かゆみに対する効果は明確な有意差は見られなかったものの、症状が緩和する可能性があると考えられています。
アレルギー性鼻炎モデルマウスにおけるクロロゲン酸含有水の「予防的効果」 アレルギー性鼻炎モデルマウスにおけるクロロゲン酸含有水の「予防的効果」
28日間クロロゲン酸含有水を与えつづけて「予防的効果」を測定したもの。くしゃみ反応において濃度0.03%のクロロゲン酸含有水で、鼻掻き行動では同0.1%のクロロゲン酸含有水でそれぞれ有意差が出た。
アレルギー性鼻炎モデルマウスにおけるクロロゲン酸含有水の「治療的効果」 アレルギー性鼻炎モデルマウスにおけるクロロゲン酸含有水の「治療的効果」
※0~13日目までは与えず、14日目以降にクロロゲン酸含有水を与えることで「治療的効果」を測定したもの。くしゃみ反応において濃度0.1%のクロロゲン酸含有水で有意差が出た。

アレルギー症状の緩和に必要なコーヒー量

アレルギー症状の緩和に必要なコーヒー量

上記の研究で使用されたクロロゲン酸含有水の濃度を、コーヒーに換算すると以下のようになります。

濃度0.03%......コーヒー1〜2杯分
濃度0.1%......コーヒー3〜5杯分
濃度0.3%......コーヒー10〜20杯分

この結果から、くしゃみを抑える効果を期待するなら一日1〜2杯、鼻の違和感を抑える効果を期待するなら一日3〜5杯のコーヒーを、2週間以上継続的に飲むことで症状を有意に抑えられる可能性があると考えられます。

杉本先生 実験では、2週間以上の飲用において効果が認められました。単発ではなく、継続的に飲むことがポイントです。

つらい症状を抑えるための心掛け

つらい症状を抑えるための心掛け

アレルギー症状の原因が花粉だとわかっている場合は、花粉に触れる機会を減らすことが大切です。外出時にはマスクやゴーグルを着用し、花粉の侵入を防ぐ対策を心掛けましょう。衣類も、花粉が付着しにくい素材を選ぶとより効果的です。家の中では、こまめに掃除をしてアレルゲンを取り除き、清潔な環境を維持しましょう。

また、野菜をたっぷり取り入れたバランスの良い食事を取ることも重要です。野菜にはクロロゲン酸をはじめ、抗酸化作用のある成分が豊富に含まれており、アレルギー対策に役立つとされています。

清潔な環境を保ち、バランスの良い食事と花粉をガードする対策を心掛けながら、毎日適量のコーヒーを飲むことで、花粉症やアレルギーのつらい症状を少しでも和らげましょう。

杉本先生 野菜にも、クロロゲン酸が豊富に含まれています。肉はほどほどに、野菜をたっぷり食べるのがよいでしょう。そこにコーヒーも取り入れればバッチリですね。

花粉症でつらい季節を健康的に乗り切るために、ぜひ適量のコーヒーを生活に取り入れてみてください。

まとめ
  • 日本で最も多いのはスギ花粉症。花粉の飛散時期である1〜4月は要注意
  • コーヒーに含まれるクロロゲン酸には、花粉症などのアレルギー症状を緩和する効果が期待できる
  • 効果を得るにはコーヒーを2週間以上飲用する。一日1〜2杯でくしゃみを、3〜5杯で鼻の違和感を軽減できる可能性がある
  • 外出時のマスクやゴーグルの着用、室内のこまめな掃除など、基本的な対策も忘れずに
  • バランスの良い食事を取ること。特に、野菜にもクロロゲン酸が含まれているため積極的に摂取すると良い
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