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COFFEE BREAK
インタビュー-Interview-
2018.12.17
竹内智香【スノーボードアルペン選手】
エスプレッソは、自分でもいれます。
竹内智香【スノーボードアルペン選手】
オリンピックのスノーボード選手で日本人女性初のメダルを獲得した竹内さん。カフェに行きたいと思う時は良い精神状態なのだそうだ。
10歳から始めたスノーボードが冬季五輪の正式種目になったのは、長野大会。私が14歳の時でした。オリンピックで活躍する選手たちの姿に衝撃を受け、自分もあの舞台に立ちたいと思ったのです。その直後にニュージーランドでスノーボードキャンプをするツアーに参加しました。初めての海外旅行。以来、トレーニングなどでニュージーランドには何度も足を運んでいます。
現地でよく行くカフェが何軒かあり、短くても1時間、長いときには5〜6時間、いることもあります。持参したタンブラーにソイラテをいれてもらって、ゆっくりと本を読んだり、パソコン作業をしたり......。長居をしても周りの誰も気にしないような、そんなのんびりした空気が流れていて、思い切りくつろぐことができます。
トレーニングや仕事で張り詰めた時間の中で過ごしていると、なかなかカフェに行く時間が作り出せない日もあります。けれど、ちょっと心に余裕ができると、カフェに行こうかなと思う自分がいます。そういう時は、自分自身が良い精神状態なのだと確認することができる、一つの目安になります。
海外ではエスプレッソも、滞在先のホテルや家で、自分でいれて飲んでいます。20代の頃、約5年間、活動拠点をスイスにしていたことがあり、直火式のエスプレッソメーカーを使って毎日のようにいれていました。気持ちもすっきりとなるような濃い味が気に入って、ニュージーランドやアメリカの滞在先にも同じエスプレッソメーカーを置くようにしました。思い返してみると、コーヒーを飲み始めた高校生の頃から、よく飲んでいたのはカプチーノかブラック。最初から砂糖を入れずに飲むのが好きでしたね。今は主にソイラテにして飲んでいます。
4年経って初めて感じた、銀メダルの喜びと価値。
競技人生の中でずっと心がけているのは、起きている出来事をすべて受け入れて、どんな状況にも対応できるようにするということです。
たとえば食べ物は可能な限り体に良いものを心がけていますが、その一方で、海外では日本と事情が違い、必ずしも望むものが食べられないこともあります。試合の前日の食事でも、カップラーメンでしのがなければいけないようなこともある。そんな時でも調子を崩すことなく、常にベストな力を発揮することができる自分でありたい......だから、細かいことにあまり神経質にならないようにしています。
2014年のソチオリンピックでは銀メダルを獲得することができました。でもあの時は金メダルが欲しかったので、正直、悔しい気持ちしかありませんでした。それから4年間、金メダルを目指して練習を続けて、2018年の平昌オリンピックでは5位という結果でした。ただ、私にとってこの5位にはソチ以上の達成感がありました。というのも、怪我などのトラブルを始め、非常に調子の良くないシーズンでしたので、その中での5位というのは予想以上の成績。後悔もいっさいなく、むしろ、すべてを出し切ったという満足感でした。そして、平昌で5位になったことで、改めてメダルをとることの難しさを痛感し、初めてソチの銀メダルの価値を感じることができたのです。銀メダルという結果に自分を納得させて、平昌を目指していなかったら、きっとその銀メダルの本当の喜びや価値をかみしめることはなかったと思っています。その意味でも平昌は忘れられない大会になりました。
PROFILE
竹内智香(たけうち・ともか)
広島ガス所属。2002年に高校生でソルトレークシティオリンピックに出場、パラレル大回転で22位の成績を残す。その後、4大会連続でオリンピック出場。ソチでの銀メダルは日本人女性のスノーボード選手で初のメダル獲得という快挙だった。18年の平昌では5度目の五輪出場を果たした。12年のW杯で1位、15年の世界選手権で銅メダル獲得など、スノーボード界に名を残す成績を収めている。