COFFEE BREAK

インタビュー

インタビュー-Interview-

2019.12.24

松本薫【元女子柔道選手】

コーヒーのアイスクリームを作りたい。松本薫【元女子柔道選手】

コーヒーのアイスクリームを作りたい。
松本薫【元女子柔道選手】

現役時代、「野獣」の愛称で注目を浴びた松本さん。昔から美味しいコーヒーとアイスクリームには目がない、のだとか。

 人生初のコーヒーは、中学生の時。テストの前に一夜漬けで勉強をするために飲みました。小さい頃から両親が食後に必ずインスタントコーヒーをブラックで飲むのを見ていたので、コーヒーは身近な存在でしたが、苦いから子供はまだダメだよと言われていました。でも、その時はテストの勉強のためだし、眠くならないためにいいかな、と思いながら、最初からブラックで飲んでみたのです。すると、不思議と苦みはなく、この味、そんなに嫌じゃないと感じたことを覚えています。大学生になってからは日常的に飲むようになり、柔道選手をしている間もずっと飲んでいました。

 現役引退後は、オーガニックの化粧品やサプリメントなどを開発する会社に所属し、アイスクリームショップを担当しています。夫もコーヒー好きなので、毎日、朝食の後に必ず飲み、会社に行くと打ち合わせや会議の合間に飲んでいます。普段はミルクを入れて飲むのが好きですね。実家の両親は、もちろん今も食後のコーヒーを欠かさずに飲んでいます。

「パフェが食べたい」に、予想以上の反響が

年内に第二子を出産予定。「アイスの新製品が出ると家族3人で試食します。お腹の子は男の子なので、私に似て暴れ馬なら柔道をやるかもしれません(笑)」。

 コーヒーにミルクを入れるのは、もともと生クリームやソフトクリームが大好きだからです。
 2012年のロンドン五輪女子柔道57キロ級で金メダルを獲得した次の日の記者会見で、「今、食べたいものは」と聞かれ、「ビッグパフェが食べたい」と答えました。すると、日本に帰ってから行く先々のカフェやレストランでパフェを出してくださるので、1日に5回食べた日もありました(笑)。

 すごく嬉しくて、ありがたいことだったのですが、さすがに毎日パフェばかりを食べ過ぎたことで、体調に変化が出てきてしまって......。どんなに好きなものでも度を越して食べ過ぎるのは良くないのだと反省しました。

 そしてそれを機に、たくさん食べても罪悪感がなく、糖質やアレルギーにも配慮したアイスクリームを作ったらどうだろうと思うようになったのです。それが今のアイスクリームショップを始めるきっかけでした。牛乳の代わりに豆乳を使い、白砂糖やグルテン、トランス脂肪酸を含まず、健康志向の方やアレルギーを持つ方、ヴィーガンの方にも安心して食べられるアイスクリームを作っています。

 じつは、これから作ってみたいと思っているのがコーヒーのアイスクリームです。会社で私が飲んでいるコーヒーは無農薬で作られたハワイのコナ・コーヒーなので、そのような豆を使って作れたらと......。コーヒーはやっぱり苦味があったほうが美味しいし、さらにアイスクリームとしては甘みも必要です。豆乳を使って、コーヒーの美味しさをいい具合に出す方法を追求していきたい。それが今の課題です。実現に向けて頑張りたいと思います。

 現役時代は獲物を狙うような「野獣」の目つきで話題にしていただきましたが、あれは自分自身を戦いのモードにマインドコントロールするためのものでした。2016年のリオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得し、その後、結婚、出産しました。夫と二人で育児をしながら、柔道に接する時間がどんどん短くなって、ふと気がつくと、野獣になって試合で勝ちにいく気持ちがなくなっていました。試合で負けても悔しさを感じなくなったこともあって、引退を決めました。今は美味しいアイスクリーム作りに邁進しています。

文・牧野容子 / 写真・大河内禎
更新日:2019/12/24
PROFILE
松本薫(まつもと・かおり)
ベネシード所属。石川県金沢市出身。帝京大学法学部卒業。6歳になる直前に母親から「ソフトクリームの形をしたお菓子を買ってあげるから」と言われて柔道を習い始める。2009年から本格的に世界に挑戦。12年ロンドン五輪に世界ランキング1位で臨み、金メダル獲得。同大会の日本柔道で男女唯一の金メダルとなった。16年のリオデジャネイロ五輪で銅メダルを獲得。19年2月に現役を引退。
コーヒーのアイスクリームを作りたい。松本薫【元女子柔道選手】
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