全日本コーヒー協会

COFFEE TIMES

インタビュー

インタビュー-Interview-

2022.07.29

髙木菜那(元スピードスケート選手)

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引退して、ますますコーヒーとの仲が深まっています。

今年の春に現役を引退した髙木菜那さん。コーヒーとは中学生以来のおつきあい。そして、五輪での大活躍の秘訣は、コーヒーにもあったようです。

 コーヒーを飲むようになったのは中学生の頃からです。親が飲んでいるのを分けてもらって飲む程度でしたが、当時からブラックでも大丈夫でした。そのまま大人になってもずっとコーヒーが大好きです。特に5、6年前からは、美味しい嗜好品というだけでなく、スピードスケート選手だった私にとって、コーヒーはレースに向けて自分の集中力を高めてくれる大切なアイテムにもなっていました。

 レースがあるときは、その1時間〜1時間10分前にコーヒーを飲むというのが私のルーティンでした。自分で淹れたブラックコーヒーを小さなポットに入れて持っていくのです。そのタイミングで飲むと気持ちが集中し、とてもいい状態でレースができて結果につながるのを実感できたことがあって、それ以来ずっと続けていました。一方で、レースに出ない日や練習の日には、ほっとくつろぐ時間にのんびり味わうという飲み方をしていました。だから、ほぼ毎日、何かしらコーヒーを飲んでいるという生活でした。

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 現役を引退した今は、食事については何も気にせず、なるべく自分の好きなものを食べるようにしています。トレーニングをほとんどしなくなって筋肉も減ってきて......でも太りたくはないので、なるべく我慢もしつつ、でもやっぱり食べたいものを食べたいときに食べるという自由は大切にしたい......そんなせめぎ合いの毎日です(笑)。それでいくと、コーヒーも現役時代より今のほうがよく飲んでいます。以前は夕食の後に飲むのは控えていましたが、今はその縛りもなく、仕事でパソコンに向かう時間が増えてきたので、作業をしながらずっと飲んだりもしています。

 家で飲むときはコーヒーマシンで淹れたブラックコーヒー。そして、カフェに行くとカプチーノということが多いです。ただし、外に行っても、体と心がコーヒーを強く求めているなと感じるときは、断然ブラックのホットコーヒー。やっぱりそれが一番美味しいと感じます。だから夏でもアイスよりはホットのブラックをよく飲みます。ホットのほうが、より香りを楽しめますし、"ああ、コーヒーを飲んでいるな"と強く感じることができる気がします。

スピードスケート王国オランダはコーヒー王国?

 現役時代は海外遠征が多く、特にドイツとオランダにはよく行きました。どちらもコーヒーが美味しい国で、やや濃い目の味なので、カプチーノなどミルクを入れたコーヒーもとても美味しく感じられました。それと、カップが大きいことも、日本と違うなあと思う点でした。特にオランダはどこにでもコーヒーショップがあって、オランダの人にはすごくコーヒーを飲むイメージがあります。

 数年前、私たちスピードスケートの日本チームにオランダ人のコーチが就任しました。彼も御多分に洩れず、コーヒーをすごく飲む人で、何かあると「カフェに行くぞ」が口癖でした。例えば練習が終わったら「カフェに行くぞ」といって、それでみんなでカフェへ行きます。オランダではスケートリンクにもカフェが併設されているので、ちょっと時間ができるとすぐに「コーヒーを飲もうか」となるのです。

 私はもともとコーヒー好きでしたが、ほかの選手の中には、彼のおかげでコーヒーを飲めるようになった人も少なくありません。飲めるだけでなく、コーヒー好きを自任する選手も多く、遠征先にコーヒーミルを持参する人もいるほど。それは、紛れもなくこのコーチの影響といっていいと思います。

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 2018年の平昌五輪で、チームパシュートとマススタートの2種目で金メダルを獲ることができました。平昌の前までは五輪で金メダルを獲ることが夢だったので、その夢は叶ったことになり、当然、大きな達成感もありました。でも、その後で、これからどういう風にスケートと向き合っていこうかと考えたときに、自分の中に、今よりもっと速くなりたい、速さを限界まで追求したい、というような新たな夢が幾つか出てきました。それを次の北京五輪までの4年間の目標として、練習に打ち込みました。

 それがコロナ禍になり、海外への移動ができなくなって、世界の選手と戦う楽しさやワクワク感というものを改めてすごく感じるようになりました。そして、そのような状況の中で、いろんな人の支えがあって私たちはスポーツができているんだということも改めて感じられました。そういった思いを経て、皆さんに何かを伝えるためにも五輪でしっかり結果を出そう、と思って本番に臨みました。北京が終わり、今年の4月に引退をしましたが、振り返るとそんな風に、いつも何かしら自分の夢という目標に向かって動いていたスケート人生だったと思います。

 今は講演活動やテレビのお仕事もしています。指導することはあまり考えていませんが、子供たちにスポーツをする楽しさは伝えていきたいと思っているので、イベントなどができたらいいなと思っています。より多くの方にスポーツをもっと身近に感じてもらいたいという思いもあります。いろんなことにチャレンジしていきながら、また新たな自分の目標を見つけることができたらいいなと思っています。

文・牧野容子 / 写真・大河内禎
更新日:2022/07/29
PROFILE
髙木菜那(たかぎ・なな)
北海道出身。兄の影響で小学2年生でスピードスケートを始める。2014年のソチ五輪ではチームパシュートで4位。18年の平昌五輪ではチームパシュート、マススタートで優勝。夏季・冬季を通じて日本人女子では初となる、一つの大会において複数種目の金メダリストとなり、マススタートでは初代女王として五輪史上に名を刻んだ。また同年にはチームパシュートでW杯4戦全勝の総合優勝、3連覇を達成。22年の北京五輪ではチームパシュートで銀メダルを獲得。同年4月に引退を表明。