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COFFEE BREAK
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世界のコーヒー-World-
カフェは循環型経済の実験ラボ、廃棄物からサイドメニューも誕生 ベルリンから
カフェは循環型経済の楽しい実験ラボ、廃棄物から新しいサイドメニューも誕生。
Vol.120 ドイツ・ベルリンから。
近所のパン工房から自転車で配達される、サンドイッチ用のパン。ライ麦パンなどの残りは乾燥させ、りんごと自家製ヨーグルトに合わせて「ポリッジ」(温かい朝食メニュー)に。ほんのり塩っぱくて、後を引く美味しさ!
クラブカルチャーが有名なベルリンに、DJとしてやってきたデトロイト出身のピーター・デュランさん。アントワープでサスティナブル・デベロップメントの勉強をしていた彼だが、バリスタとしてカフェ・ノイン (http://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/biz/vol-31-2)で働き始めたことから、この「イスラ・コーヒー」のアイデアが生まれたという。2016年に、カフェ・ノインのフィリップ・ライヒェルさんとともにこの店をオープンした。
「ゼロ・ウェイストを追求する上で、時間やエネルギー効率はもちろん、経費なども含めて、環境に負荷がなく経済的に最適な方法を考える。このカフェは、サーキュラーエコノミーの楽しい実験ラボでもあるんです」と、ピーターさんは言う。
牛乳やコーヒーなど原材料の産地はもちろん、物流、店で使う機械の省エネ性など、包括的に考えて店を経営している。
[上左]ミルクは、1日に8〜10リットル余剰が出る。これをヨーグルトなどに加工し、サイドメニューに使用。[上右]ピーターさん。「店内では、リラックスをしてくれることが第一なので、サーキュラーエコノミーをアピールはしていません。お客さんがコーヒーカップの素材やサイドメニューを見て、話が広がることも」[下]カプチーノ、3ユーロ。コーヒーメニューはコーヒーかすを使った「カフェフォーム」のカップで出している。(コーヒーかすのカップの記事)
例えば、カフェで使っている牛乳はベルリン近郊のオーガニック農家から仕入れているが、意外にもその包装はリターナブルなガラス瓶ではなく、使い捨てだ。
「この包装は超軽量で、ゴミも、製造時のエネルギーや水の消費も少ない。仕入れ先を決める際に実際に農家に行ってリサーチをして、運搬距離が110km圏内ならばリターナブル瓶よりこの包装の方が、サスティナブルだとわかったんです」
そのミルクは、カプチーノなどを作る際にどうしても出てしまう余剰分を集めておき、ヨーグルトやリコッタチーズに加工して、カフェのサイドメニューの原料に使っている。
「手間がかかりすぎるという人もいます。しかし、これで毎月かなりの金額が浮きますからね。ヨーグルトができる時に出る乳清もケーキに使ってますし......余すところがないですよ!」普通なら廃棄されてしまうものから、新しい"副産物”を考えるのが楽しいと、ピーターさん。しかし全てを自家製にすることが良いというわけでもないという。ベジタリアン・ヴィーガンのお客に人気の、オートミルクは使用量や手間を考えて市販品を使用する。
[上]前のテナントが残していった木材や家具をアップサイクリングしたインテリア。[下左]自家製ヨーグルトをつかったレモンケーキは絶品。ケーキに使ったレモンの皮の残りは、刻んで、柚子胡椒ならぬレモン胡椒にしてサイドメニューに。[下右]店内のキッチンには、スパイスなどとともに、余ったパンを乾燥させて作ったクルトンやパン粉、残ったハーブを使ったドライハーブなどがずらりと並ぶ。
コロナ禍第2波が広がり、再び飲食店はテイクアウトのみが許される「ロックダウン」の中で、イスラ・コーヒーも様々なアイデアを試している。デポジット製のテイクアウト用コーヒーカップRECUPの導入もその一つ。コロナ禍を機会と捉え、イスラ・コーヒーは変化を続けていくのだ。